みちのく岩手の伝統工芸家具
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岩谷堂箪笥について岩谷堂箪笥について

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岩谷堂家具を造り
あげるすべての工程に、
本物の技と心が
息づいています。

一人の職人が木取りから一貫して行う木地造り。
800年とも言われる歴史を誇る南部鉄の金具。
深くやわらかな漆の光沢。

和洋のどんな空間の中でも、不思議な調和が生まれるのも、
これら全ての工程に本物の技と心が息づいているからなのです。
そしてその使いこなしには、単なる家具をはるかに超えた
潤いのある楽しさが秘められております。

平安時代から
今に息づく岩谷堂箪笥

岩谷堂箪笥の起源は、平泉が栄えていた頃の康和年間(西暦1100年代)、藤原清衡が産業奨励に力を注いだ時代にさかのぼると伝えられております。
もっとも当時は現在のような箪笥ではなく、長持ちの箱のような大型の箱のようなものだったと考えております。
その後、天明時代(西暦1780年代)に岩谷堂城主、岩城村将が米だけに頼る経済から脱皮しようと、家臣の三品茂左衛門に命じて箪笥の製作、塗装の研究、車付きの箪笥を作らせ、喜兵衛、大吉の二人が鍛治職となり、更に文政年間(西暦1820年代前後)には、徳兵衛という鍛治職人が彫金金具を考案しました。
これが原型となり、岩谷堂箪笥の技術が現代に引き継がれているのです。

明治時代になると箪笥もようやく一般家庭に広まり、それと共に岩谷堂箪笥の需要も増大しました。
漆塗りと飾り金具の美しい岩谷堂箪笥は評判となり、北上川の下川原港から下がって宮城県北に、更に東北各地へと岩谷堂箪笥が出荷されていきました。
昭和に入り、30年代には一時期、岩谷堂箪笥の生産が低迷しましたが、時代に流されることなく伝統の技術を守ることこそが発展の道と確信し、苦しい時代を乗り越えて40年代初めに首都圏を中心とする都市生活者へと需要が広がっていきました。
昭和57年には、当時の経済産業省である通産省の厳しい審査をうけて、晴れて通産大臣指定伝統的工芸品(現:経済産業大臣指定伝統的工芸品)の指定を受けるに至りました。
現代ではこの伝統を生かし、現代風岩谷堂箪笥として多くの方にご使用いただいております。

岩谷堂箪笥を形づくる
唯一無二の技術

木地造り

木地造りは、箪笥作りの「生命」ともいわれ、一人の職人が木取りから重厚な形状を作り上げるまでを一貫して行います。
岩谷堂箪笥に使われている材科は欅(けやき)、杉、栗、桐などで、なかでも最も岩谷堂箪笥を特徴づけているのが欅です。
表面には強い材質を誇る樹齢300年以上の欅の突き板を使用し、内部抽斗材には桐の無垢材を使用します。お客様のご注文によっては「玉杢」(たまもく)と呼ばれる樹齢600年以上の欅を使うこともあります。
伝統の技術と厳選された材料によって作られた岩谷堂箪笥は、和室はもちろん、今の近代住宅にもインテリア家具として住空間を引き立てる品となっております。

漆(うるし)塗り

岩谷堂箪笥の特徴は丹念に漆(うるし)を塗って研きを繰り返します。
最近では遺跡の発掘でも、たびたび漆を使用した道具が発掘されているように、漆は縄文・弥生時代から使用されていました。漆塗りは外観の美しさはもちろん、重圧さ、耐久性においても非常に優れています。
昔から岩手県は日本を代表する漆の産地で、平泉文化を華麗に装飾した漆塗装の技術が岩谷堂箪笥に生きています。

漆塗りには、拭き漆塗りと透明な木地呂塗りがあり、塗っては拭き、塗っては研くという工程を何度も繰り返します。
例えば木地呂塗りは次のように行われます。細工された木地に水をつけて砥石で研く。研いた木地に漆と砥粉を混ぜてヘラで塗り、乾燥させて研き出す(下地)。次に生漆だけをヘラ(いたちもみぢの木で作った特殊なヘラ)で塗り乾燥させて、また丹念に研ぐ(下地押さえ)。刷毛で塗っては研ぐを数回繰り返す(中塗り)。刷毛で上質の木地呂漆を塗りさらに研ぐ(上塗り)。最後に摺漆を数回し、その度に磨きを入れます。

拭き漆塗りも透明の木地呂塗りもどちらも多くの手間がかかります。この漆の工程が岩谷堂箪笥の欅の木目の美しさをいつまでも保つのです。何年も経て次第に欅の木目が浮き出てくるように見えてきます。そのツヤ・硬度・光沢はまさに本物と呼ぶにふさわしい風格。時を経るにしたがって、独特の風合いが醸し出されるのも、高度な漆塗りの技術の裏付けといえます。

飾り金具

岩谷堂箪笥の大きな特徴の一つは飾り金具にあります。この金具には伝統技法による鏨(たがね)を使って手彫りでつくる「手打ち金具」と、南部鉄の技法を用いる「南部鉄器金具(鋳物金具)」の2種類があります。
「手打ち金具」は、まず始めに永い間伝えられてきた唐草や唐獅子、龍などの下絵を描きます。この下絵を鉄板や銅板に貼り、金槌(かなづち)と自分で作った何十種類の鏨(たがね)を使い裏から打ち出し、表から線刻して絵模様を生き生きと浮かび上がらせるように打ち出していきます。
裏返して膨らみをさらに出し、仕上げに鑢(やすり)をかけて整えます。一棹(ひとさお)の箪笥に60から100個ほどの金具が飾られますが、鮮やかに浮き彫りされた絵模様は堅牢さはもちろん、重厚で華やいだ装飾性は、岩谷堂箪笥の最大の特徴としての拡張を高めています。金具も最近では、鳳凰(ほうおう)や龍、牡丹などのモチーフが取り入れられるようになっております。

「南部鉄金具」を作る鋳造技術は、800年の歴史を誇り、平安時代末期に藤原清衡が近江の国から鋳物氏を招いて鋳造をはじめたのが起源といわれています。その技術はいまも、国内だけでなく世界各国からも高い評価を受けております。
デザインが決まると鋳型の中に溶かした鉄を注ぎ込み、冷えるのを待って取りだし、着色、仕上げます。そのほとんどの行程作業が熟練を要求される仕事です。なめらかで頑強な木地の上にはめ込まれた南部鉄金具の精巧かつ重厚な風合いは、美術的価値もさることながら、用と美の極地を追求した岩谷堂箪笥ならではの伝統の証となっております。